アピール21とは
会長からのメッセージ
NTT労組が目指す社会
コラム
バックナンバー
情報通信関連記事
支援議員リスト
スタッフ紹介
会員用コンテンツ

コラム

ホーム/政治学者 森田浩之の政治って何だろう?

第18回 税金ってなんだろう

 

国民生活には必要だが、民間経済から自然に出てこなくて、政府が提供しなければならない事柄があるとしよう。教育、医療、年金がそうだ。税金はそれらの費用を賄うためのもの。だからわれわれは税金を払うよう強制され、払わないと罰せられる。



1.税金の目的(1)――必要な費用を賄う

あるものが本当に必要かどうかを知るためには、頭のなかでそれを無くしてみるといい。なぜ教育を国がやらねばならないのかについて疑問があるならば、教育を想像のなかで民営化してみると、その必要性(または不要性)がわかる。

もし義務教育を民営化したらどうなるだろうか。子供に教育を受けさせるお金と意欲がある親ならばよいが、もしそうでないとどうなるか。

子供に教育を施せない親は、たいていは貧しいだろう。すると家計から教育費を出せないだけでなく、そういう家庭では、子供は将来への投資ではなく、いまの家計の補助と見られるであろう。要は子供は労働力なのだ。だから貧しい国で児童労働が起こる。

では義務教育は廃止したままだが、貧しい親にお金を与えて、その金で親に自由に民間の学校を選ばせたらどうだろうか。

ここでの問題は、親がその金を本当に子供の教育費として使うかどうかだ。もし子供の教育に熱心でなければ、国からもらった金を教育のために使わないだろう。国から教育費として支給された金を、親は自分のために浪費してしまうかもしれない。

それを防止するためには、国は直接、学校に金を払わなければならない。そして子供を通学させるよう、親を強制しなければならない。もちろんここまでに関しては、学校が公立でなければならない理由はない。すべて私立で、教育費を国が賄ってさえいればよい。

問題は学校が公立であるか、私立であるかというよりは、金が教育のために使われるかどうかだから、その意味で教育費は税金から出さなければならない。

では年金はどうか。年金を完全に民営化してみよう。するとわれわれは退職後に国から年金をもらうことはできない。反対にわれわれは自分たちの老後を自分たちで見なければならない。つまりいまから将来の自分のために貯金をしなければならないのだ。

ここでの問題は何か。貯金をせずに老後を迎えた人をどうすべきかということだ。ある人は老後のために、若いときからしっかりと貯金をする。しかし別の人は稼いだものを稼いだ瞬間からどんどん使い、老後のためにまったく貯金しない。

貯金した人は若いときに節制したから、安心できる退職者生活を享受できるが、貯金しなかった人は貯金しなかった分、若いときに楽しむだけ楽しむことができた。

さて貯金しなかった人は働けなくなってからの生活費を一文も持っていない。われわれはそういう人が飢え死にしていくのを見過ごせるだろうか。

そうでないなら、最初から政府が強制的に年金の積立金を徴収して、浪費癖のある人たちの行動を縛ってしまうしかない(もちろん現時点では、年金は税金ではなく保険料だから、政府に強制力はない)。




2.税金の目的(2)――害のある行為を控えさせる

税金の目的は以上のような必要な費用の捻出に限られない。われわれは通常、税金がかかることで金銭的に高くつく活動を控えようとする。たとえばタバコ。

いろいろな見方はあるが、ここではタバコは健康によくないと想定しよう。そして喫煙者の近くにいる人も、二次喫煙という形で健康を害するとしよう。さらにタバコを吸う人は健康を損なう確率が高いため、医者にかかることが多く、結果として国庫から支出される医療費を多く使うため、吸わない人の健康保険料を無駄遣いしているとしよう。

するとこういう活動を控えさせたほうが、多くの人にとって得になるだろう。喫煙者本人の健康につながるし、喫煙者の煙を吸わされて健康を害する人も少なくなるし、すでに予算を圧迫している医療費にとってもプラスになる。

もしタバコの税金がゼロで、タバコの価格が市場によって決まり、そのためタバコの価格が安かったらどうなるだろうか。ちなみに現時点で1箱300円のタバコの税金は189円だから、タバコ自体の値段は1箱100円強。もし1箱の値段が100円だったら、日本の喫煙者の数はどこまで増えるだろうか。

こういう害のある活動を控えさせるには、1つには法律で禁止するというのもあるが、そこまですべきでない場合には、税金をかけて人工的に高価にすることによって、その活動を控えさせるしかない。

これに類似するのが、たくさん排ガスを出す自動車に税金をかけるとか、二酸化炭素を排出する活動に税金を課すことで、二酸化炭素排出量を抑えようとするものがある。




3.税金の目的(3)――インセンティブを創り出す

二酸化炭素排出量を抑えるための税金を「炭素税」とか「環境税」というが、これには2つの目的がある。1つは前項のように社会的に害のある活動を控えさせるもの。もう1つは長期的には有益だが、短期的には民間経済から出てこない活動を促進するもの。

たとえば技術的には優れているが、大量生産できないために価格が下がらない製品があるとしよう。こういうものを一般消費者に買わせるための動機、経済学では「インセンティブ」と呼ばれるものを創り出すのが税金の第三の目的だ。

上の例を続ければ、ここに環境を破壊しかねない古い技術があるとしよう。たとえば化石燃料を動力源とする自動車。石油を燃やすことで二酸化炭素が排出され、それで地球温暖化が進んでいく。

一方、事業としての採算性を度外視できる技術者が、電気で動く自動車を開発したとしよう。どれほど技術的に優れていても、大量生産されないと電気自動車1台の単価は下がらない。

消費者は、確かに環境のことは気にするが、最終的には価格で自動車を選ぶ。もし電気自動車の値段がガソリン自動車の倍ならば、電気自動車を買う人はほとんどいないだろう。長期的に燃料費を節約できるとしても、電気自動車はあまり売れない。

ここに2つの手段がある。1つは電気自動車に補助金を出して、メーカーには定価(この場合は、ガソリン自動車の2倍の値段)を支払うが、半分を国(要は税金)が出して、半分を消費者が出すことで、消費者が出す費用をガソリン自動車1台分と同じにする。

もう1つはガソリン自動車本体の税金(自動車重量税など)を高くするとともに、ガソリンに環境税を課すことで燃料費を人工的に割高にする。すると消費者は自動車本体価格と燃料価格を計算して、電気自動車を選ぶようになる。

ここでは税金は人工的に(すなわち市場の自然な働きを矯正して)消費者に電気自動車を選ばせるインセンティブを創り出している。

鳩山政権は2020年までに二酸化炭素排出量を1990年比で25%削減することを公約した。そのためには、エネルギー政策を大きく変更しなければならない。いいかえれば、化石燃料を燃やしつづける経済社会を根本的に見直さざるを得ない。

しかしいまはまだ化石燃料を使う技術でないと、消費者に手が出せる商品(とくに自動車などの交通手段)を造ることはできない。有権者には不人気かもしれないが、インセンティブ創出のための税制に踏み出さないと、環境問題の解決はむずかしいだろう。

 

(このコラムは毎月1日と15日の月二回。次回は1月6日です。)




政治学者 森田浩之のプロフィール
ページトップへ
バックナンバー一覧へ