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ホーム/政治学者 森田浩之の政治って何だろう?

第22回 二大政党制の一つの理想型

政治とカネの問題は検察ではなく、有権者の手によって解決されるべき、つまり捜査によってではなく、選挙によって解決されるべきだというのが私の持論だが、それを一番確実にする方法は、政権交代可能な政治システムを確立することだ。



1.二大政党制を支持する理由

では政権交代可能な政治システムを確立するためにはどうすべきか。選挙で政権交代が可能なような政党システムを作り上げることだ。政党の数が二つになることがそれを確実にする。

しかし意見が多様な現代社会で、民意が二つの政党に集約されるはずがない。民意は多様であるにもかかわらず、政党は二つ。つまり少数意見が政治論議から排除されるのだ。

さらに二大政党化することは、政権を取り得る政党が二つに収斂されることだから、当然これら二つの政党は巨大化する。すると党内でも少数の意見が圧殺される。要は二大政党制は根本的な欠陥を抱えている。

ところが、もし国民の多様な意見が反映されるように、政党システムも小党分立状態になるとどうなるか。選挙で過半数以上の議員を当選させることができる政党はなく、政権はいつも選挙後の政党間の合従連衡によって決まる。

もちろん得票率と議席率との差が激しい、言い換えれば、死票の多い小選挙区制は最善ではない。しかし少数意見を反映させる比例代表制下では、政権はいつも連立になり、政治家間の密室での交渉・取引によって政権が決まることになる。

選挙制度の問題はこれはこれで大切だが、今回の目的はここにはない。今回は仮に二大政党制が受け入れられるとして、二つの政党が代表する政治理念に関することだ。




2.経営者と労働者

私は階級闘争を煽るつもりはないし、労使協調はそれ自体、悪いものではないだろう。というより、それは私の専門外だ。しかし人がどれほど良心的で、どれほど寛容で、どれほど広い視野を持っていて、他人の立場に立って物を見る能力を持っているとしても、それでも自分の立場を完全に無視して行動し、決定することはできない。

ここに二人の人がいるとする。二人はそれぞれの素性をまったく知らない。そして偶然、飲むことになった。意気投合し、相手の立場に配慮できるほど、お互いに好意を持ったとしよう。しかしもしこの二人が同じ会社の経営者と労働者だったら、ある特定の状況下で同じ決定に至るだろうか。

ある会社が不況の波に襲われて、業績不振に陥ったとしよう。そのとき両者は本当に相手の立場に立って、相手に同情し、相手が喜ぶ解答を出せるだろうか




3.現代企業のあり方

資本主義を完全に否定しない限り、われわれは次の二点は(ある程度までは)受け入れなければならない。(1)株主が会社の所有者であること。(2)株式市場が存在すること。

個人経営ならいいが、大企業の場合、借金だけで会社を設立することはできない。失敗した場合、そのリスクをすべて自分だけが負うことはできないし、それよりもなによりも、そんなリスクの高いものに金を貸してくれる人はいない。

するとたくさんの数の証券を発行し、それをたくさんの人に買ってもらうことで、会社設立のための原資を調達するしかない。

それにはもう一つ利点がある。借金ではないから、失敗しても会社設立者にリスクはない。借金と株式との大きな違いは、借金の場合は、倒産したとき、経営者=所有者が負債を背負うことになる一方、株式の場合は、経営者は会社の所有権を株主に与える代わりに、倒産した場合のリスクを株主に背負わせることができることだ。

以上が(1)。次が(2)だが、もし一度買った株式は転売できないという法律があったらどうなるか。一度買ったら手放せない買い物、とくにそれが大きな買い物だったら、どうなるか。われわれは躊躇するだろう。

というより、失敗するという懸念がある限り、怖くて怖くてそんな買い物はできないだろう。要は株式市場が存在して、買った株を転売できるという安心感が、投資を促進する。




4.雇用と収益

これで現代企業の特徴が整理できた。それは「所有と経営の分離」だ。経営者は会社の所有者ではない。もちろん、いまの日本はまだ(幸運なことに)アメリカ型の企業経営にはなっていないが、それに近づいていることは確かだ。

それの行き着くところは、経営者が株主の顔色を伺う経営だ。ここでもし株主と経営者の思惑が一致していれば問題はない。しかしもし異なっていたら、どちらが勝つか。

もしアメリカ型が定着すれば、経営者、アメリカ流に言えば、最高経営責任者(CEO)は社外役員が多数を占める取締役会が決める。そしてその取締役の人選は株主、とくに大株主が決める。

こう見ていけば、企業で一番力を持っているのが株主ということがわかるだろう。では株主の思惑は何か。会社を大きくすることか。顧客の満足度を上げることか。社員の生活に責任を持つことか。

もちろん、そういう思惑があることは否定しない。信念や好意や人情から、特定の株を買う人も多いだろう。しかし現代の大株主の多くは投資銀行だ。彼らの思惑は、投資銀行自体が営利企業である限り、収益を上げること。株の投資で収益を上げるためにはどうすべきか。その株が安いときに買って、高くなって売ることだ。

要するに株主はそれが慈善事業でない限り、買ったときと売るときの株価の差で儲けていくわけだ。だからできるだけ株価が高くなってほしい。では株価を高くするためにはどうすべきか。利益を上げることだ。

実は株価は企業の「売り上げ」に反応するのではなく、「利益」に反応する。利益とは売り上げからコストを引いたもの。

不況下で株主の意向に沿うように、会社を浮上させるためにはどうすべきか。目標は利益を上げること。不況である限り、売り上げを伸ばすのは現実的でない。ならばA-B=CのAの数字を上げることはできないから、Bの数字を下げることで、Cを上げるしかない。要はコスト削減だ。

ではコストを削減するためには何をすべきか。操業時に発生しているさまざまな無駄を取り除くことができれば、確かにコストは削減できる。無駄な材料を仕入れない、無駄な在庫は持たない、無駄な中間取引を減らす…。

しかし最大のコスト要因を取り除くのが、最も効果的で、最も簡単ではないか。そう、人件費という最大のコストを削ることができれば、利益は上がっていく。




5.経営者の政党・労働者の政党

同じ状況に置かれた二人の人は、それぞれの立場が違うという、ただそれだけのことで、まったく異なった決定に至る。経営者は不況下では人員の削減に乗り出す。労働者は不況下こそ雇用の安定を求める。

ところで少し古い数字だが、2007年、日本経団連が自民党に出した政治献金の額は29億1000万円。民主党に行ったのは8000万円(毎日新聞2009年6月2日付)。誰かが労働者の味方になる必要があるだろう。

(このコラムは毎月1日と15日の月二回。次回は3月1日です。)




政治学者 森田浩之のプロフィール
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