森田 社会的に弱い立場にあるような人たちに何か政策を投げかけていくとき、例えば、NTTグループのような大手企業に働く皆さんと必ずしも利害が一致しない部分が生じた場合、どうやって政策への理解を求めますか。
石橋 大事なのは、一見、利害が対立するような課題でも、それが社会のためになるのであれば、長い目で見ればみんなの利益になる、つまり利害の対立などない、ということを理解してもらうことだと思います。
私も、全国を回りながら改めて、NTTグループで働く仲間の皆さんたちにも幅広い層があることを認識しました。
電電公社時代に高校を卒業してすぐに入社されて、激動の時代を過ごして、もうすぐ定年を迎える先輩方がいます。一方で、民営化後にNTTに入社された方々、またはNTT再編後にグループ企業に入社された比較的若い世代の方々、さらには契約社員や派遣社員など、いわゆる非正規と言われる雇用形態の皆さんもいる。今の状況に不満なく生活されている方々もいれば、雇用や労働条件、出産・子育てや子どもの教育、年金や介護といった面で不安を抱えながら働いている方々もいます。そういう多様な状況にある皆さん方と話をすると、NTTグループに働く仲間の中でも政策の優先課題は違うし、短期的な利害の対立というのも、当然あり得るのです。しかし、皆さん「労働者のため、生活者のため、納税者のための安心・安全の社会」を望んでいるという点では一致しています。これは、NTTグループの枠の外に出ても同じだと思います。
今、雇用の量だけでなく、雇用の「質」が危機に瀕していて、社会の中での格差が拡大しています。税収も落ち込み、地方財政は困窮を極め、各地で自治体の提供する公共サービスや、医療、介護、教育などの社会サービスも低下しています。自・公政権の失政・悪政が社会を壊し、働く仲間全体が、そして生活者全体がその煽りを受けている、という状況なのです。
ですから、これから政策を講じる場合、「大企業労働者と中小企業労働者」「恵まれた労働者とそうでない労働者」といった利害対立からの視点ではなく、「格差や社会的排除をこのまま放置していたら社会全体の不利益になる、私たちみんなが不幸になる」ということをきちんと論議すべきで、その上で政治が国の方向性を示しながらマクロ分配の歪みを是正していくことが重要だと思います。
森田 全国の職場めぐりで、普通の人々の素朴な生活の悩みや疑問をたくさん耳にされていると思いますが、今後、政治家になった後の課題として、エネルギッシュで権力欲が蔓延する政治の世界で、常識人的な感覚や平常心を保つにはどうすれば良いでしょうか。
石橋 皆さんのお力で国会に送っていただいた暁には、もちろんベースの仕事場は国会になります。しかし大切なのは、引き続き今のように多くの話を聞けるよう、可能な限り全国を回り続けることでしょうね。その点では、私がいたILOも同じでした。ILOも基本的な政策・戦略はスイスのジュネーブ本部で作ります。その本部には、もう何十年もジュネーブにいて現場にはほとんど行ってないという専門家もいっぱいいます。そういう現場の実態をあまり知らない人たちが政策形成に深く関与しているんです。現場の情報は報告書やデータで知っていても、実際に現地を見ず、現地の人と話もしていない、そういう人たちが世界の人々に影響を及ぼす政策を決めていくのはすごく危険だなと感じていました。ですから私自身は、とにかく、現地へ行って、現地の人たちと膝を交えて話をして、政策提言をしてきました。月並みな言い方ですが、これからもやはり可能な限り現場を歩き続けて、社会の変化を常に肌で感じながら、政治を実践していきたいですね。
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